2009年2月15日日曜日

【鉄鼠の檻】禅問答はあまり好きじゃない

「姑獲鳥の夏」以来、気に入って読み進めて来た京極堂シリーズ。今度の舞台は箱根の、秘匿された禅寺。



京極堂シリーズの面白さはまあ、詭弁の凄まじさやら魅力的なキャラクター、濃密な陰影があるが陰惨には過ぎない読後感などいろいろあると思うが、自分の場合では、しばしば馴染みのある場所が舞台になるというのもある。

中野や神保町は通勤経路みたいなものだったし、小金井は何年か住んでいたところだし、相模湖や逗子も何度も足を運んでいる。今回の舞台である箱根も、小学校の林間学校に始まり、彼女(現妻)との温泉旅行に至るまで、というか、それ以前にバイクツーリングで何度となく、足を運び歩き回りもした場所だ。

知っている場所そのものが出なくても、なんとなく情景が連想されるだけで、臨場感はいや増す。

にしてもだ。

鉄鼠の檻は…全体にはもちろん、面白かったし、意外な展開に驚いたりもしたのだが…。

禅の歴史の蘊蓄や公案の語りは正直途中から飽きてしまったし、憑き物落としの鮮やかさもイマイチに感じた。

けっしてつまらなくはなかったが、なんとなく、俺の中でのこのシリーズに対する勢いが、殺がれたように感じたのは否めない。


…男色ネタがいただけなかったのかなあ。いや、きっと、悪い意味での禅問答に対する嫌悪があるからかもなあ。