もとより、通勤電車の暇つぶし(最近はiPhoneでネットを見ていたが飽きた)であるから、何の本でも良かった。と言いつつ、西尾維新のファン…などではないつもりだが、戯言シリーズは読破しているので、まあ、好きではあるのだ。
「この本を書くのに10年かかった」とか何とか、思わせぶりなコピーと、いきなりの自伝的独白に、つうか自伝なのか?と一瞬思わされるが、まあ、俺としては、普通はありそうな前書きなどが何もないところ、あまりにも説明が省かれている点に「ははーん、自伝と勘違いさせるつもりだな」とか勘ぐりつつ読み進めた。
ま、途中の詳細は書かないが、結果を言えばとても面白かった。読み終えた翌日も、クライマックスを読み直し、また頭から読んでしまうくらいに。…まあ、電車内で時間を持て余しているだけとも言えるが、つまらなければそんなことはしない。
例によってというかなんというか、自虐的、露悪的、偽悪的で、意図的に冗長な韜晦が続く。これがくどくてつまらない人もいるようだが、俺としては面白い。テクニックとしてではなく、俺にはその冗長さは無駄に思えないからだ。よくわかる。気がする。自分も、何か思考する時には冗長に考える癖があるから。
もっとも、何より共感するのは、主人公の抱える疎外感だ。共感したくないものだが、共感せざるを得ない、残念なことに。コミュニケーション能力がおかしなことになっている自分は、共感せざるを得ないのだ。
ま、ともかく、なんだかんだで最後は良かった。良い物語だった。