2009年8月20日木曜日

【日本沈没 第二部】意外なほどつまらない…

第一部というかオリジナルというかの方を読んで、面白かったので勢いで第二部も購入。

小松左京は、当初から第二部を想定していたのだが、実際に大地震が起きてしまったり何だかんだで、書けないでいたとか。で、もはや高齢で執筆が辛いということで、谷甲州という作家が代わりに書くことになった、とかそんな話で共著ということになっている。



で、まだ上巻しか読んでいないのだが。一応これから下巻も読むのだが。

正直、のっけから詰まらないし、読み進めるにしたがって、ますますガッカリ感が募った。話自体は盛り上がる方向に向かっているんだけどね…。


まず、前作から25年後ということで、登場人物は大方刷新されている。中田など若干名の主要人物は25年後のやけに出世した姿で再登場しているが。

ただ、それにしろ新しい人物にしろ、読んでいて魅力を感じない。何と言うか、薄っぺらい。人物が薄っぺらいというよりは、その人物の像が薄っぺらい。だから、感情移入できないというか、淡々と粗筋を追う感覚になってしまう。

日本沈没は、20世紀末頃を舞台にしていたが、執筆当時よりは未来が舞台だったから、ところどころ、今現在の日本より先進的に思えるような世界描写もあった。

その世界の続きとしてさらに25年が経ったはずの世界を舞台にしているのに、どうも世界がイモ臭い。というか、ネットだとかデジカメ、携帯端末と言ったガジェット類は、むしろ今現在より陳腐な印象だ。特に個人のコンピュータ利用環境がショボい。

これは、意図的に、日本が沈没したせいでその他の世界の技術発展も停滞したという描写をしているわけではなく、ただ単に作者が現時点の現実世界を基準に書きつつ、実際の技術の先端をよく知らないからそうなってしまったようにしか見えない。


また、国土を失った日本人を物語が追うために、舞台が世界のあちこちに移るのだが…未曾有の災害を体験した後25年先の未来であるはずなのに、危機管理意識がゼロの途上国人だの、中央アジアで警官に賄賂が横行するだの、そんな聞き飽きたステレオタイプみたいな現実をそのままグダグダ書かれても、正直なんの面白みもない。そういう現実が残っていたとしても、日本の沈没と日本人の離散が、そういう問題に局所的にでも影響して、どういう反応が起こったか…それがない。

いや、あるのかも知れないが、それがただの、今現在そこらで起こってる地域紛争みたいな話だというのじゃ、敢て日本が沈没したという大掛かりで荒唐無稽な舞台設定を苦労して作った意味がわからん。

バイオレンス系の本作には異色ぽい登場人物、山崎も、なんだか突然に凄腕の秘密工作員みたいになって遭難しかけてみたり、どうも話も突飛で説得力が低い。

率直な感想。

著者の谷甲州は、青年海外協力隊としてネパールに在住していたらしい。そのあたりの「通な体験」をモチーフにした途上国の現実の描写をリアルっぽく語るだけで、満足してしまっているのではないか。

ノンフィクションの重さはないし、フィクションならではの深さや広がりも無いし、なんだかなあ。という印象。

小松左京はさっさと自分で書くか、いっそ誰にも書かせなきゃ良かったろうにと思った。

2009年7月17日金曜日

【ガダラの豚】裏の裏の裏

中島らもの「明るい悩み相談室」は好きだった。

だからというわけではないが、「ガダラの豚」を読んだ。

※ネタバレします




まず、1巻。

内容(「BOOK」データベースより)
アフリカにおける呪術医の研究でみごとな業績を示す民族学学者・大生部多一郎はテレビの人気タレント教授。彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は超能力ブームにのってベストセラーになった。8年前に調査地の東アフリカで長女の志織が気球から落ちて死んで以来、大生部はアル中に。妻の逸美は神経を病み、奇跡が売りの新興宗教にのめり込む。大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てるが…。超能力・占い・宗教。現代の闇を抉る物語。まじりけなしの大エンターテイメント。日本推理作家協会賞受賞作。


次々に登場する超常現象と、それをバッサバッサと種明かししていくミラクルのトリック暴き。だが、特筆すべきは、トリックを暴けないが騙されない大宇部教授の論理だ。

相変わらず世間は疑似科学に騙されやすい。みんなこれ読めばいいのに、と思った。

疑似科学やカルトを切り捨てる本は少なからずあるが、ガダラの豚は、種明かしをしつつも、けっして啓蒙書ではなく、エンターテイメントなのも素晴らしい。面白い。

全3巻なんだが、この1巻で事件は解決しており、2巻に進むのに間が空いてしまった。

間があいたのに2巻を読もうと決心したのは、気になることがあったからだ。

冒頭、似非じゃない宗教として密教系のとぼけた老僧の修行シーンがある。エピソードとして面白いのだが、本編に全然絡んでいなくて、これがその後どういう意味をもつのかが気になってしかたなかったのだった。




内容(「BOOK」データベースより)
大生部一家はテレビ局の特番取材で再びアフリカへ旅立つ。研究助手の道満、スプーン曲げ青年の清川、大生部の長男納、テレビのスタッフ6名。一行はケニアとウガンダの国境沿いを北上してスワヒリ語で「13」という意味の不吉な村、クミナタトゥに着いた。村民に怖れられる大呪術師バキリの面会に成功した一行は最大の禁忌を犯す。バキリのキジーツの少女を攫ったのだ。危機一髪。ケニアを後にする。日本推理作家協会賞受賞作。


2巻。

舞台は一点してアフリカに。
1巻では、大宇部教授の知識としてだけ語られていたアフリカの呪術が、現実のものとして描かれる。

現実のものとして…というのが、呪いは「本当だ」「嘘だ」という単純な問題ではなく、ただ、少なくとも現実なのだという意味が、この本を読めばわかる。

とは言え、物語は前巻に輪をかけてエンターテイメント。恐ろしく、邪悪な大呪術師も登場し、ついに大量の人死まで出る。犠牲者の多くは物語の中核にはいなかった端役で、ホラー映画なら登場時から死亡フラグがピンコ立ちな感じだが、それにしてもちょっと随分死にすぎじゃない?とも思った。

何せ、1巻ではいろいろアクションもあったけど、ヤクザが数名重傷を負ったくらいで、まともな人物は誰も死ななかったから、そういうもんだと思っていたら、最後の方で一気に。

面白かったけどちょっと怖くなって来た。




3巻。
1、2巻は押し並べて高評価だが、3巻は意見が分かれるらしい。

通訳のムアンギ、テレビクルーたち。6人もの犠牲者を出して大生部は娘を取り戻した。「バナナのキジーツ」の志織を奪いに呪術師バキリは東京に来ている。番組関係者の回りでは次々奇怪な事件が起こる。司会者嬢の惨殺、清川の変死。元・プロデューサーの馬飼は大生部一家と大呪術師バキリが対決する生番組を企画した。光と影、呪いと祈り。テレビ局の迷路でくりひろげられる世紀末スペクタクル大団円。日本推理作家協会賞受賞作。



3巻はのっけから危険な雰囲気。そして、悪い予感通りに、主要な登場人物が次々と、それは惨たらしく死んで行く。

マフィア、ヤクザを手駒に使うバキリの「呪い」は、薬品やトリック、暗示に現実的な武力を駆使した、巧妙だが普通の殺人なのか。それとも、科学を超えた得体の知れない力を本当に操っているのか。

これまで、この作品で、いくつもの呪いや奇跡が、語られては種明かしされてきた。これも、そうなのか?そうかも知れない要素も見える、だがそれだけではなさそうな…

と、不安と期待がないまぜになって読み進む。

はっきり言って、この3巻、人が死に過ぎで酷い。

だが、どうしても気になる。


死の間際、バキリとの対決で清川が見せたのは、本人も長く失っていた、そして作品中で遂に、初めて見せた、本物の超能力ーサイコキネシスなのか?

そうとも思える描写だが、バキリは暗示による幻覚を多用するので、それが現実とも言い切れず、歯痒さが残る。

全編、この調子で、真相は薮の中で行くのかな…と思いつつ、そうではない予感もあった。



何故って。

3巻の半分ほどまで読み進めて、それまでずっと俺が引っかかっていたのは、1巻の冒頭に出て来た、とぼけた密教の老僧、隆心の護摩行のシーン。炎の中に黒い面を見て、覗き込むあまり顔面を火傷して修行に失敗するショボい話なのだが…。

ここで隆心が見たものは、紛れも無く予知の類いに属するものと思われ、これについては、作中で何の種明かしもされていなかった。つまり、「本物の超常」というのが、この作品中にはある、と踏んでいたのだ。


そして遂に、3巻で再び登場した隆心は、バキリの相方であるキロンゾの心臓を法力で潰して倒す。ただ、キロンゾも隆心の脳の血管をねじ切り、相打ちとなる。

このシーン、双方とも敵味方の「主」ではないのだが、しかし、ここから明確に、物語はサイキックバトルの様相を呈し始める。

物語の5/6くらいまではずっと、いかにも超常現象ぽいものを出しては種明かしをして、「結局そんなものはないんだよ」というスタンスだったのが、この土壇場で。

そして最後、バキリと大宇部教授の対決。

ラスト数ページにして、遂に主役の大宇部教授が、覚醒する!


覚醒した大宇部教授は強く、バキリは壮絶な最期を迎え、大団円(かなり多くの人間が死んでいるが)を迎えるのだった。

このラスト、確かに、それまで積み上げてきたものをぶち壊すかのように、一気に荒唐無稽のご都合主義になり、ともすれば、「作者が最期で嫌になって適当に書いたんじゃないか?」とさえ思えるのだが、これはやはり、中島らもの確信犯的なやり口なんだろうと思った。

たくましく成長した息子。
1巻では疲れた主婦だったのが2巻では快活で魅力的で美しい妻となり、3巻では、さらにチャーミングで強いママと、確実にハリウッド映画キャラ的に進化した逸美は、ラストは、無理やりな展開で下着でヤク中の空手男とバトルを演じる。むしろハリウッドではないところで取られるアメリカの映画のようなB級展開。

その逸美もいよいよ力尽きようかというところで、それまでの頼りない姿から一転、圧倒的な力をもって現れる主人公(ハゲでデブの中年で、しかもこの時ズボンを穿いていない)。

「私は目を醒ました。」

たぶん、作者は、これが書きたいがために、前半はひたすら緻密に、堪えて堪えて壮大な前振りをしたんじゃないかなあ。

苦笑気味になるものの、やはり、それでも、結局のところは、3巻の最期も含めて、俺としては喝采ものだった。

面白かった。

2009年7月15日水曜日

【日本沈没】正直、意外な面白さ

なんて言うか、カタストロフィもの?
で、もの凄いヒーローが出て来るわけでもないし、アクションぽいシーンもあるけど半端っていや半端なんだが。

とにかく圧倒的なのは、日本が沈むような超規模の地殻変動が、”あり得るかも知れねえ”と思わせる科学的な裏付けだ。俺は、地震は専門外とは言え、大学では地学分野を専門にしていたから、一般よりはそのあたりの事情に明るいはずだ。それでもそう感じられるくらいに、設定は緻密で飛躍はさりげなかった。

それに、やはり人間の描写がよいのだろう。憧れるようなスーパーヒーローや萌えを誘うヒロインはなくても、上下巻を楽しむことが出来た。



面白かったので映画を見ようかと思ったが、ネットであらすじ見たところ、随分とつまらなそうな気がした。でも特撮はスペクタクルかも知れないからやっぱ見てみようかなあ。

2009年6月12日金曜日

本読みが嫌いだ

ここにろくでもない感想文を書いている通り、最近はよく本を読む。
あるきっかけで1年ほど前から、通勤電車内で本を読む習慣になったからだ。
本を読んでいると、数十分にわたる乗車時間が短く感じられるのが素晴らしい。そう、思い切り暇つぶし目的だ。

とは言え、せっかく読むので、面白そうだと思うモノを選ぶようにしている。
どこかで聞いたことあるとか、1冊読んで面白かったからシリーズの続きを選ぶとか、その程度の基準ではあるが。

ただ、それでもネタに詰まると、「おもしろい小説」とか身も蓋もないキーワードで検索したりして、適当なものを探してみることがある。

リンクを辿って、自然と、「本好き」「読書家」のブログか何かに辿り着くことがある。

世の中の本読みの人たちは、随分とたくさんの本を読むようだ。よくもまあ、と思うほど読む人々が多いらしい。

だが、どうも、その手の人々の言説は、いちいち首をひねりたくなる者が多い。さすがは読書家を自認する人びと、滔々と豊富な語彙で語られる読書論?は淀みなく隙もない。

ような気もする。のだが、どうも、なるほど!とか思うようなものが何もない。しかし、そんなサイトのコメント欄など見ると、同好の士からの同意と共感の声が並んでいたりする。


なんというか、何なんだろう。俺が、読書の真の価値?のようなものを理解しない低能だから、その高度な論理、議論についていけてないのだろうか。それで、その共感を俺は感じられないのだろうか?



…もちろん、そんなことは鼻くそほども思ってはいない。中学生の頃から読書好きを自認する級友と話をすると反吐が出る思いだった。だから小説を読むことすら嫌いになっていたのではないか、と思えるくらいだ。

幸い、今の俺は、「本当の本好き」の人びとと、本そのものを糞味噌にするほど若くない。成長は素晴らしいな。

2009年6月9日火曜日

【膚の下】なんとも独特の世界観


淡々としていて、それでいて濃い。くどいくらいに濃い。

面白いのだが、背表紙だけ見た妻にエロ小説かと疑われた。


この話は、実は三部作の三作目だ。ただ、作品内の時系列では三部作の冒頭だ。

ただ、話としては独立していて、順番は気にせずに読んでも、それぞれ不都合なく読めるようにはなっている。

どこまでも平和な解決を求めつつ、どうにも切ない。なんだろうねこれは。SFの設定としては結構ぶっ飛んでる方だし、ある意味、その心情的なものも含めて、大人向けのお伽噺のような感じかも知れない。

まあ、結論としては、とても面白かった。

【巨人たちの星】ダンチェッカーが止められない


「星を継ぐもの」「ガニメデの優しい巨人」に続く三作目。まだ続きもあるようだが、本来はここで完結だと思う。なぜなら、この三作目のラストで、見事に一作目で提示されたうちのもっとも根本的な謎について、見事に回答するからだ。

相変わらず派手な艦隊戦はない…んー、実際ないが、ここにきて若干のアクションは入る。話は太陽系を飛び出して、途方もなくスケールアップする。

全体に対して比重は軽いものの、いくらかロマンス要素も増え、最近のSFのスタイル?になって来ているのかも知れない。

しかし、特筆すべきは、ますます冴えるクリス・ダンチェッカーの論理だ。もはや痛快の域に達っしている。理屈を語るだけでそう思わせるキャラクターというのもなかなかない。いや、戦わないキャラクターは他にもいるだろうが、そうではない。ダンチェッカーは、知謀も策略も何もないのだ。ただ、事実を観察し、それを考察し語るだけ。

そう、今気づいた。ダンチェッカーはたぶん、俺が昔に憧れた科学者の姿なのだ。ただ事実を事実として、論理を論理として語る。本物の学者の大部分はそれのみではないようだと知って、俺は科学者を目指すのを止めてしまった。俺ももう大人だし、研究も資金がなくては出来ないという事実も知っているので、簡単に学会批判をしたいわけじゃないが、幻滅したのは確かだ。

だが、こうあって欲しい、と思っていた科学者たちが、このシリーズにはいる。それで…それが、面白いのだろう。

やはりダンチェッカーはヒーローだ。禿げて頑固なジジイでも。

「科学」という言葉に何か感じるところがある人も、そうでない人も、ぜひ読んでみるとよい物語だと思う。

【ガニメデの優しい巨人】ヴィクター・ハントの影が薄くなりつつある


前作、「星を継ぐもの」の続編。とは言え、とって付けたようなパート2ではなく、前作では明らかにされなかった大きな謎の数々に答えが与えれていく。

事実が1つ明らかになるごとに、新たな謎が次々と現れて行くのだが、その展開も見事だ。ただ、謎の内容は前作以上に科学的にマニアック?になっており、ある程度の自然科学系の素養(高校の生物を覚えてる程度でいいと思うが)がないと、つらくなってくるかも知れない。

が、俺には面白かった。なので、すぐにさらに続編を買った。

【星を継ぐもの】科学の小説


たぶん、男前で切れ者の原子物理学者のハントが主人公のはずだ。きっとそうなのだ。だが、気づいてみると、本当のヒーローは禿げた金縁眼鏡の生物学者のクリス・ダンチェッカーではないか、という気になってくる。

海外SF、ファンタジーには、ジジイがヒーローの作品がしばしばある。脇役にかっこいいジジイがいるんじゃない。あくまで主役級で。ドラキュラのヴァン・ヘルシングや、古くはホビットのガンダルフなども。

最近のライトノベルなどの、可愛らしい少年少女が主要な登場人物である話も、別に嫌いじゃない。だが、ダンチェッカーその他のいぶし銀の魅力は、やはりなんとも言えない味わい深さがある。


「星を継ぐもの」と言えば、最近ではZガンダムの映画のサブタイトル、古くはジャンプで短命の名作として名高いSFマンガ(自在剣と書いてスパイラルナイフと言って、何人が思い出せるだろう)などが思い浮かぶが、この小説が元祖であり、それらにモチーフを与えた存在なのだろう。

国連による惑星間航行技術の実用化がなされた近未来で、月の裏側の秘密、宇宙人と人類の起源といったテーマを背景に物語が展開するのだが、この一見なんともありきたりな題材、そしてたいしたロマンスもなし、対艦にせよ対人にせよ戦闘もなしでありながら、読み始めると止まらない面白さだ。

特筆すべきは、そのリアルな「科学」界の描写。科学のものの考え方、学者のものの考え方(これらは似て非なるものだ)が、自分もかつて自然科学分野の日本(ホゲ)学会に所属していた俺から見ても、とてもリアルで面白い。もちろん、小説として実際のものよりエキサイティングに描かれているとは思うが、実情を知っていてそれを脚色しているという感じで、想像だけで描かれる「科学者」「博士」像とは一線を画していると思う。

それだけに、もしかしたら面白くない人には全然面白くないのかも知れないが、そのケのある者が読めば、知的な興奮、論理の楽しさ、そういったものに引き込まれること請け合いだ。

実に面白い。おすすめだ。読んだら仕事にも役立つこと間違い無しだ。

2009年2月15日日曜日

【鉄鼠の檻】禅問答はあまり好きじゃない

「姑獲鳥の夏」以来、気に入って読み進めて来た京極堂シリーズ。今度の舞台は箱根の、秘匿された禅寺。



京極堂シリーズの面白さはまあ、詭弁の凄まじさやら魅力的なキャラクター、濃密な陰影があるが陰惨には過ぎない読後感などいろいろあると思うが、自分の場合では、しばしば馴染みのある場所が舞台になるというのもある。

中野や神保町は通勤経路みたいなものだったし、小金井は何年か住んでいたところだし、相模湖や逗子も何度も足を運んでいる。今回の舞台である箱根も、小学校の林間学校に始まり、彼女(現妻)との温泉旅行に至るまで、というか、それ以前にバイクツーリングで何度となく、足を運び歩き回りもした場所だ。

知っている場所そのものが出なくても、なんとなく情景が連想されるだけで、臨場感はいや増す。

にしてもだ。

鉄鼠の檻は…全体にはもちろん、面白かったし、意外な展開に驚いたりもしたのだが…。

禅の歴史の蘊蓄や公案の語りは正直途中から飽きてしまったし、憑き物落としの鮮やかさもイマイチに感じた。

けっしてつまらなくはなかったが、なんとなく、俺の中でのこのシリーズに対する勢いが、殺がれたように感じたのは否めない。


…男色ネタがいただけなかったのかなあ。いや、きっと、悪い意味での禅問答に対する嫌悪があるからかもなあ。

2009年1月1日木曜日

クリスマスは鶏肉を食べる日だと思っている

もはや、クリスマスなる日がどこの宗教の誰の誕生日だろうと感謝祭と降誕祭と七面鳥と鶏がフォークダンスを踊ってようがいまいが、とにかく、我が国においてのクリスマスイブという日は骨付きの鶏肉を食べる日なのだ。

何より俺はローストチキンが大好きだ。ローストチキンを好物と宣言した記憶は6歳までは遡る事が可能だし、それより前も好きだったと思う。

そんなわけで、チキン焼きました。

本当は男らしい丸鶏が好きだが、さすがに嫁と零歳児では食いきれないから足2本。スーパーで、1本690円の足を調達。300円くらいの足もあるが、ごちそうとしての食べ応えを望むと、だいたいこの価格だ。でかくて味も濃い。

選んでいる最中、店内で焼き立てのものも並べられていて、値段もそう変わらないので一瞬心が折れそうになったが、しかし俺がチョイスした鶏肉は調理済みには出てないものだったし、味付けがどうも店のものは甘過ぎて好きじゃないし、何より、家で焼きたてはやはり別格だからなと生のを買う。


焼き方。いろんな方法があるが、簡単なレシピを探して以下を参考にした。

参考 http://cookpad.com/recipe/470289


マーマレードと醤油と酒を3:3:1で混ぜ、ニンニクと生姜はチューブで済ませた。混ぜた液をビニール袋に入れ、足2本を入れ、揉んで馴染ませ、口を縛って30分放置。
オーブンは、200度25分にした。なんとなく。

結果。

香ばしい皮と、かぶりついた瞬間に肉汁が溢れるジューシーな肉、豊かな香り。店内調理品の温め直しではなかなかこうはならん。

すげー美味かった。

でも肉がすげえでかい上に、嫁が食いきれないとか言うから1個半食べたら、ちょっと食い過ぎで気持ち悪くなったのが無念。適量も味わいのうちか。