2008年9月26日金曜日

【魍魎の匣】鳥口ちょっと軽薄

姑獲鳥の夏を読んですっかり気に入り、そのままシリーズの続きである魍魎の匣も読んだ。

これも、結論から言うと、かなり面白かった。払った金以上には十分に楽しめた。いまどき、舞浜あたりの張り切った遊園地に行けば1日で万単位の金が吹っ飛ぶのだ。ドライブしたってガソリンは高く、高速道路を1時間も走れば数千円が二酸化炭素やら何やら見えないものに化けてしまう。こんな時勢に、たかだか数百円でこんなに楽しんでしまって良いのだろうか、と心配になってしまう程度には楽しめた。俺は文庫1冊読むのに5時間前後はかかるからね。




さて、今回は前作より話も長くなっていたが、武蔵小金井(住んでいた)、相模湖(よく釣りに行った)などの、馴染みのある土地が頻出したのはまた良かった。舞台設定は戦後だから、俺の知っている景色がそのまま出て来たりはしないが、なんとなくの親近感は湧く。

関口は相変わらずいい感じに混乱しており、ゲストキャラが前作より若く女子高生(だけじゃないが)というのも興味深かった。もちろん、今時の馬鹿馬鹿しいギャルが出てくるわけじゃないし、ミステリのゲストなんてのは事件のおよそ当事者達なわけで当然後ろ暗い何かがあったりするわけだが、これが戦後復興期の女子高生のあった姿をどの程度現しているのせよしていないにせよ、主要キャラが三十路揃いのこのシリーズに一抹の瑞々しさを与えていたであろうことは間違いない。あー、ちなみに、美少女との描写はあったけど絵とかは無いからね、別に萌えるとかそういう意味じゃないよ。

ただ、話がより複雑になっていて、京極堂の憑き物落としも前回ほどの切れ味はなく(それは作中の本人達の事情によりだ)思え、すっぱりさっぱり爽快なものを嗜好する俺としては、姑獲鳥の夏の方がより面白かったとは感じた。

が、それを差し引いても、十分に面白かった。

「この世には不思議なことなど何もないのだよ」

俺も、ここぞという絶妙なシチュエーションで言ってみたいものだ。そんな機会が来るとも思えないが。

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