もはや説明不要のような気もする。
「犬神家の一族」。金田一耕助シリーズとして有名で、やはりその中でも一番有名なのではないだろうか。
ゴム仮面の佐清、冬の湖面に足だけ突き出した奇怪な死体。
とは言え、実は俺がこの作品について知っているのは、実は以上の情報がすべてであった。実際に読んだことはないわけだ。なので読んだ。
今更、こんな有名過ぎる作品を初めて手に取るあたり、俺は今まで本当に本というものを読まなかったんだなあ、と呆れ返るとともに、思いがけないところに安価な楽しみを見出して喜んでいる次第である。
あらすじはまあいいや。知ってる人も多いだろうし、知らない人は読めばいい。
簡単に感想をまとめると、
ヒロインの珠代は、美しく、苦悩をしていたわけだが、いまいち感情移入はできんかった。「絶世の美人」として描写されているが、どうも最後まで唯々諾々と流されてる感が拭えなかった。もちろん、多少の意思表示はあるのだが、陶物っぽさを払拭するには至らず。
その他の主要人物、ゴム仮面の佐清、デブの佐武、オタクっぽい佐智は、まあ容疑者であり被害者であり、ということで何を考えているのはよくわからず、しかしロクなことは考えていなそうということだけは伝わってくるので、やはり感情移入しずらかった。
最後の方でどんでん返しはあるわけだが・・・ちょっと突然な印象を受ける。まあ、そこが醍醐味なんだろうけど。
と、珍しくあまり好意的でない感想を言っているが、おそらくそれは、あるひとつの不満に収束されるのだ。
つまり、金田一耕助に共感出来ない。
知的好奇心の塊みたいな人物として描かれているのだが、何がどうってわけじゃないんだが、読めば読むほど、人死に対してあまりに軽薄な態度に感じられて、むしろ「いい加減にしろよお前」という感情さえ抱いてしまった。
何がそう感じさせるのか、はっきりとはわからない。ところどころ、憂いのある言葉もあったように思うし、犯罪を防ごうとしてもいると思った。だが、何か、文体のせいなのか台詞のせいなのかわからないが、俺の金田一に対する印象は、名探偵である以前に無責任な職業探偵、となってしまったのだ。
主人公に肩入れ出来なくては、さすがに他の何を以ってしても物語が色褪せて感じられてしまう。
もちろん、それなりには面白く、読んでれば先も気になって、すぐに読み終わったのだが・・・でも、ねえ。
金田一耕助は俺のヒーローには当てはまらなかったようだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿