2008年9月27日土曜日

【涼宮ハルヒの憂鬱】表紙には抵抗あったぜ

暇つぶしとして、DVDや映画というものは良いのだが、やはり本というのは素晴らしい。
通勤電車の中で、寝る前の布団の中でと、場所を選ばずにすぐ読める。

読もうと思ってから実際に読めるまでの立ち上がりの早さ、止めようと思った瞬間には0.1秒で終了できる、この意思に対する追随性は未だデジタル機器の及ぶところではない。

てなわけで、結局は映画よりも本の方が気に入ってしまって、随分と久しぶりにせっせと本を買っては読んでいる。

俺は本が好きそうだとよく言われるし、嫌いなつもりもないが、でも実はあんまり読んでない。仕事のための技術関係の本ならちょこちょこ読んでいたが、単純に楽しみのための小説なんかは・・・本当にここ15年で5冊も買ったかどうか。

ちなみに前にまとめて小説を買った記憶は、ガンダムI、II、IIIとゼータガンダム全6冊だったか?を読破した中学生時代にまで遡らなければならない。ひどい。野蛮人か。

それが、ここのところ、まあ勢いに乗っていろいろ読んでいるのはこれまでにも書いている通りなんだが。

今度はこれ。



涼宮ハルヒの憂鬱。

確か数年前に大ヒットしてたんだよな。当時、電車で隣のおっさんが呼んでいる新聞の書評欄にも出てたり、まあ結構あちこちでそのタイトルと「ただの人間には・・・」という有名なくだりが目に付いていたから、その存在は知っていた。

でも、そういう書評や例の台詞などからは、俺にはイマイチ面白さが読み取れなかったので、さほどの興味はなかった。

で、ある夕方、ストックしていた本も読み終えてしまったし、テレビはつまらんし・・・と、思い立ってGYAOを見たら、そのアニメ版の第一話がやっていたのだ。

で、暇つぶしに見てみた。

ら、なんと言うか・・・高校を舞台になんかやけに自己中な少女がぎゃーぎゃー言って、老成した少年が溜息を吐いているばかりといった印象で、やっぱり大して面白くなかった。よくある学園ラブストーリーにナンセンスギャグなのかな?と。


しかし、どうも何かこう、引っかかるというか、随分ヒットしたからには、これだけじゃないんだろ?という気持ちもあり、続きが気になるも二話以降は無料では見れなかったので―

買ってきたのが原作の1巻。まあ、昼飯程度の値段だから、かつての話題作を読んで、「やっぱ大したことねえな」で終わっても数時間潰せればいいのだ。


と、そんなノリで読み始めたのだが・・・これがなかなか・・・読み始めて間もなく、確かにアニメは原作に忠実だったのだろうが、主人公のモノローグをそのまますべて台詞にするわけにもいかないから適宜端折られてもいたわけで、そういったちょっとの差が、結構、俺には好意的に受け取れるギャップとなっていた。

まあ、これこそまさにライトノベルであるから、読みやすさは折り紙付きということでつらつらと読み進むにつれ、気持ちいいほどに期待通りに期待を裏切って結果期待通りに盛り上げてくれる展開。

たぶん多数派の感じ方を俺もしたのだと思うが、やはり、寡黙なメガネ少女・長門が主人公の「キョン」に正体を無理やり明かし、その胡散臭いにもほどがある稀有にして壮大な話を証明することになるくだり、とりわけそのいきなりで壮絶なバトルに、単純に心躍らしてしまったわけだ。

これをきっと多数派と感じたのは、読了後にネットでちらりと確認し、その「長門」が、かの「綾並」と双璧を成していると知ったからだ。そういう捉え方に、俺はすっかり常識人の振りをしても、やはり自分の中に頑として存在するオタク的センスを認めざるを得ないのはちょっと複雑な気持ち。



さて、とは言え、この話がとても面白かったのは、念のため声を大にして言っておくが、主要キャラであるところの3人の美少女(というかどんなジャンルであれ創作物に不細工少女など登場しないのが通例だ)のイラストに心惹かれたというような純粋に二次元LOVERな興味の為ではない、と主張したい。イラストは正直に言ってかわいいが、俺はこれでも、過去に人間のプラモデルはグフに付いて来たランバ・ラルくらいしか作ったことはない。

語り部であるところの主人公の少年は、もっとも古い記憶の時点でサンタクロースを信じておらず、にも関わらず「宇宙人や未来人や幽霊や妖怪や超能力や悪の組織やそれらと戦うアニメ的特撮的マンガ的ヒーローたち」との遭遇を待ちわびていた。


その感覚に、とにかく激しく同意できたのだった。


きっと、それほど珍しいことではないのだと思う。

だが、ともあれ、俺も確かに、4歳まで記憶を遡ってもサンタクロースの実在は一度も信じた覚えがないし、小学校ではクラス皆が心霊ネタで盛り上がっているときに、理屈を捏ねて水を差して白眼視され、くだらない錯覚と思い込みで夢見る連中をバカにしながらも、図書室で一番好きだった本は”世界の怪奇現象”みたいな本で、学生になってからもバイクであちこち出かけては「河童」だの「鬼」だの「環状列石」だの云うケッタイなキーワードを辿っていた過去がある。

人並み以上に怪奇現象を否定し、一方で少しばかり人並み以上にそれを追い求めていた。

そしてそういう感覚は、三十路を超えた今だって、完全に消え失せたか?と言えばそんなことはない。もちろん、分別のある歳だから、そんな願いが字句通りで叶うなんて思ってないが、「そんなことは無い」と知ることと「あったらいいな」と思うことは別だ。

日常風景で始まった物語があれよあれよという間に途方もないスケールの非日常に変わって行くストーリー、また主人公の軽妙な語り口もあって作品自体非常に面白いと思ったが、そこにさらにある種の郷愁を覚えるものだからか、まあ、端的に言えば嵌った。

シリーズで出ているが、どれもこれも表紙を飾るのはアニメ的な美少女画。中身は別にエロでも何でもないというか、むしろ少年ジャンプ程度のサービスシーンすらなく、この上なく健全なのだが、慣れがないと手に取るのに抵抗は少しあるな。あるんだけど、続きも買って来て読んでしまった。

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